それを見た今泉部長は「あっ」と小さく声を出し、町田さんは困った表情を浮かべている。

フロア内に微妙な空気が流れる。
まぁ、そうなるだろうとは思ってたけど。

誰も口を開けずにいたら、その場の空気を一掃するような声が聞こえた。

「なに、その残骸。風船が勿体ないんだけど。桜井ってかなり不器用なんだな」

その声の主は新庄くんだ。
給湯室の件もあり、気まずくてあまり話はしたくなかった。

仕事中、隣からの視線が痛かったけど気付かない振りをしてどうにか過ごしていたのに……。

麻里奈、我慢だ。
不器用なのは自覚している。
新庄くんの言葉にムカついているけど、ここは無視を決め込もう。
そう思っていたら、町田さんがフォローしてくれた。

「なんだよ、新庄。そんな言い方はないだろ。今回初めて作ったし、麻里奈ちゃんだって一生懸命練習してるんだから、ね?」

「だって、一生懸命やってこれってどうなんすかね」

明らかにバカにしたような顔で私を見る。
カッチーン、さっきの一言で気まずさも吹っ飛んだ。

「はぁ?私だってすぐに剣の二本や三本、綺麗に出来ますけど!」

威勢よく新庄くんに向かって言うとフンと鼻で笑われた。

「絶対、俺の方が桜井より上手くそれを作れると思うけど」

町田さんが手に持っている犬の風船を指差す。
練習してもちゃんと作れていない犬を私より上手く作れるですって?