「そう言ってもらって少し気持ちが軽くなりました。ビビらずに風船を扱えるように自主練習しておきます」

任されたからには、ちゃんと出来るようにならないといけない。

「そうだな。麻里奈ちゃんが風船をねじる時、かなり顔が強張っているし腰が引け気味だからな。こういうのって思い切りが肝心だし、何回もやっていればすぐに出来るようになるよ。練習あるのみ!」

町田さんの励ましに小さく頷いた。


「今泉部長!バルーンアートで犬とか作ったんですけど、お子さんにどうですか?みなさんもよかったらどうぞ」

残業している部長に町田さんが袋の中から犬の風船を見せながら声をかけた。
数人の人が残業していて、仕事をしていた手を止めて興味津々に袋の中身を見にくる。

「お、なかなかいいのが出来てるじゃないか。このリボンなんて可愛いし。さすが、麻里奈ちゃんだな」

今泉部長は黄色のリボンの風船を手にしているけど、私が作ったと勘違いしている。
あれは町田さんが何個か作った内のひとつ。

「あの、それは町田さんが作った物なんです」

「え、麻里奈ちゃんじゃないのか?」

今泉部長に言われ、私はバツが悪く肩を竦めた。

「私のはこれです」

手に持っていた二つの袋を持ち上げた。
片方のビニール袋には色とりどりの風船の残骸、もう片方の袋の中にはちょっとバランスの悪い剣が数本入っている。