「全員の好みに一致する物があればいいけど、それは難しいからね。だったら少しでもバリエーションを増やそうかって話になって、ぬいぐるみやビーズの指輪を作ってみたんだ」
子供たちのために細かい気配りが出来るのはさすがだなと思う。
「そうなんだね。私も欲しいぐらいだよ。これにチェーンをつけたらキーホルダーに出来るね」
「残念だけど麻里奈にはあげれないよ。小学生までだからね」
笑いながら私の手からぬいぐるみを取りあげた。
「分かってるって。あっ、それよりデートとかしてるの?」
「申し訳ないのですが、仕事中なのでプライベートなことはお話しできません」
私の質問をピシャリとはね除ける。
さっきまでフランクに話してたくせに、急に仕事モードになってるし。
って、そりゃそうか。
職場でそんなことを聞かれても困るよね。
つい、いつもの調子で聞いてしまったことを反省する。
「まぁ、その話はおいといて。今度飲みに行こうね。じゃ!」
「了解。お大事に」
唯香ちゃんに手を振り、歯科医院を出ると夏の日差しの眩しさに目を細める。
あー、暑い。
太陽がジリジリとアスファルトの地面を照り付けてくる。
日焼け止めクリームを塗ってくるのをすっかり忘れていた。
冷房の効いた部屋で冷たいものを食べたり飲んだりしたら最高だろうな。
無性に氷のたくさん入った麦茶が飲みたくなり、足早に家路についた。



