「桜井さーん」
ソファに座っていたら受付の人に名前を呼ばれ、支払いを済ませる。
「次回のご予約はどうしますか?」
「じゃあ、来週の土曜の同じ時間は空いてますか?」
スマホのカレンダーアプリをタップし、予定を確認する。
「土曜の十四時ですね。少々、お待ちください」
受付の人がパソコンの画面を見ている。
「はい、大丈夫です。では、十七日の土曜、十四時に予約をお取りします」
予約日時を記入した診察カードを渡され、それを受け取った。
「あー、定期健診のつもりが虫歯とかついてないんだけど」
思わず愚痴をこぼす。
「ふふ、でもそれで虫歯が見つかってよかったじゃない。悪化する前に治療が出来るんだから。何事も早め早めがいいでしょ」
笑いながらフランクに答えてくれる受付の女性。
この歯科医院の受付をやっているのは、いとこの新藤唯香。
一人っ子の私は、幼い頃から彼女を実のお姉ちゃんのように慕っていて、親戚が集まると必ず唯香ちゃんの隣をキープしていたっけ。
年を重ねた今でも、定期的に会ってご飯を食べたりしている。
私たち二人は飲んだ時の勢いで“片想い同盟”を結成していた。
どうして過去形かというと、唯香ちゃんに彼氏が出来て同盟を解消したからだ。
唯香ちゃんは長年の片想いが報われたと喜んでいて、私も自分のことのように嬉しくて心から祝福をした。