あのあと、勢いに任せてビールを飲み、気がついたらお開きの時間になっていた。
飲み会の時は、いつも新庄くんとバカ話で盛り上がるけど、さすがに今日は話をする気になれなかった。
「麻里奈、一人で帰れるの?送っていこうか?」
北見さんが心配そうに私の顔を覗き込んでくる。
「ちゃんと帰れるので大丈夫ですよ」
時計を確認したら二十一時半過ぎ、電車はまだたくさんある。
居酒屋を出ると、男性陣はそのまま二次会に向かった。
女性陣は主婦が多く、一次会で帰る人がほとんどだから私もその流れで帰ることにした。
多少、酔っているけど歩けるのでタクシーを使って帰るほどではない。
それに給料だってまだまだ安いからタクシー代がもったいない。
何事も節約だ。
「そうは言っても……」
プップー。
話している最中に車のクラクションが鳴り、視線を向けると車道には一台の車がとまっていた。
何度か写真を見せてもらったことがあるので、すぐに気付いた。
「あ、旦那さんが来られましたよ。それじゃあ、お疲れさまでした」
頭を下げ、駅方向に向かって歩き出すと、北見さんの声が背後から聞こえた。
「麻里奈、やっぱり送っていくから車に乗って」
「ありがとうございます。でも、大丈夫です。電車で帰りますから」
「北見さん、俺が桜井を送るんで大丈夫です」
私たちの会話に割って入るように、男性の声が耳に届いた。



