「太田さんはいろいろと世話を焼いてくれるのはいいけど、そそっかしくていつも周りが振り回されるんだよね。次に太田さんのお節介が発動する前に麻里奈は彼氏を作ることだね」
彼氏を作る、か……。
それができたら苦労はしないよな。
小さくため息をついた。
こっちが落ち着きを取り戻した頃、社長の大声が耳に届いた。
「新庄、お前の結婚式は俺がスピーチしてやるからな」
「いつになるか分かりませんが、その時はよろしくお願いします」
私は新庄くんの言葉に胸が苦しくなった。
「じゃあ、俺らは歌でも歌うか」
「おー、いいねぇ。なんなら踊りもつけた方がいいんじゃねぇか?」
「腹踊りだけは止めてくださいよ」
「新庄、それはフリか?」
「全然フリじゃないですよ」
「仕方ねぇ。俺らで見事な腹踊りしてやるよ」
「だから、フリじゃないですからね!」
先輩たちにからかわれ、新庄くんの嫌そうな声がする。
「なぁ、人前にその腹を晒すならもう少し痩せた方がいいんじゃねぇのか?」
「なに言ってるんだよ!貫禄ある腹の方が腹踊りには適してるんだよ」
「確かにな」
口々に盛り上がり笑い声が聞こえる。
もしかして、私も同僚だから呼ばれたりするんだろうか……。
それだけは絶対に嫌だ。
唇をギュッと噛む。
これ以上考えたくなくて、ビールのジョッキに手を伸ばした。



