「もう、太田さんはすぐに先走るんだから。次からは気を付けてくださいよ」

「ほんとだね。気を付けるよ」

北見さんの言葉に太田さんは反省の色を見せる。
てか、北見さんも次とか言わなくていいですから!と心の中で叫んだ。

こちらとしては残念じゃなく、むしろよかった。
危うく変なことに巻き込まれるところだったし。
太田さんの好意は嬉しいけど、ありがた迷惑だからなぁ。

これに懲りて、しばらくはおとなしくしてくれるといいけど。

「太田さんの見切り発車は危険だね。勢いがすごいし、強引に押し切ってくるから」

北見さんが耳打ちしてくる。

「ホントそうですよね。言われた時はどうしたらいいのか分からなくて泣きそうになりましたよ」

「あはは。そういや顔を見たら今にも泣きそうな顔してたもんね。実際にほっぺを噛んで泣いてたし」

クスクスと笑う。

「それは言わないでくださいよ」

「毎度のことながら太田さんは思いつきで動いているから予測不能で怖いわ」

北見さんに同意だ。
ホントに紹介されていたら……と考えただけで憂鬱になる。

「多分、あの様子じゃ反省してないからまたやると思うよ」

「えっ、ホントですか?」

「見てみなよ。もうケロッとしてお酒飲んでるでしょ」

視線を太田さんに向けると、ビール片手に隣に座っている人の肩を笑いながら叩いている。