「いや、それはまぁ……将来的にはしたいと思ってますけど」

新庄くんは肯定し、ズキッと胸が痛んだ。
しかも、噛んだところも痛くて涙が出そうになる。

持っていた箸を置き、右側の頬を手で押さえていると北見さんが驚いた表情で私を見た。

「どうしたの?目が潤んでいるけど。もしかして、ほっぺでも噛んだ?」

その言葉にコクコクと数回頷く。

「あちゃー、それは痛いよね」

北見さんは顔を歪め、自分まで痛そうな表情になっている。
何だコレ、噛んだ頬が痛いのか胸が痛いのかよく分かんないよ……。

頭の中は新庄くんのことでいっぱいだ。
よく考えたら、彼女がいるんだから結婚とか考えるのは当然だよね。
私もいい加減、この恋に終止符を打たないといけない時期が来たのかな。

鼻をすすり、口の中に残っていた唐揚げをゆっくりと咀嚼して飲み込んだ。

「麻里奈ちゃん、悪いんだけどさっきの話はなかったことにしてもらってもいいかい?」

電話を終えた太田さんはすまなそうに謝ってきた。
そういえば、そうだった。
新庄くんの結婚話ですっかり忘れていた。

私と北見さんは思わず顔を見合わせた。

「どうかしたんですか?」

「いやねぇ、紹介しようと思っていた相手が今度お見合いをするらしいんだよ。せっかく麻里奈ちゃんにと思っていたのに残念だよ」

ガックリと肩を落とす。