幸せの静寂

ー全国大会当日ー
 真澄が在籍している成南(セイナン)高校、未希が在籍している楊千(ヨウゼン)高校、碧が在籍している有翅(ユウシ)高校の女子バレーボール部は無事に全国出場を果たした。
 昨晩、真澄達とどうやって会おうか悩んでいた私は、メールで集合をかけるようにした。一年以上開いていない真澄達へのメールを開き、ドキドキしながら入力をした。

ー明日、話したいことがあるので、開会式が終わったら一階の広場に集まってくれませんか?お願いします。


(みんな、こなかったらどうしよう・・)私がきてから十分はたっているが、みんながこないので心弱気になってきた。だが、こちらに歩いてくる足音が聞こえた。
「あ、碧」
碧は、中学の頃と変わらず眠たそうな目をしていた。
「・・・久しぶり。要件って・・なんなの?」
「みんながきてから話すよ。
「そう」
碧の髪型はショートカットのままだが、身長も伸びて、色気も出てきているため、とてつもない美人になっていた。
「あ、碧と冬香だ。もういたんだ。」
そこにきたのは、未希だった。
「未希、久しぶり。」
「久しぶり〜」
未希は、肩までありそうな髪をポニーテールの形でくくっており、活発な少女という印象は変わっていなかった。
「碧も久しぶり〜」
「・・久しぶり」
「あとは、真澄だけか。」
私がそう言うと、雰囲気が暗くなった。
(あ、しまった。)
「それにしても、碧は美人になったね〜。このやろ!」と、言いながら未希は碧の髪の毛をワシャワシャと撫でた。
「ちょっと・・っ」
こういう時に、未希の性格は助かる。
場が少し和んだところに真澄がやってきた。
「この後、ミーティングがあるから、手短に済ましてね。」
「うん」
真澄も、中学の頃と容姿はそれほど変わっていなかったが、表情は冷めきっていた。
「ええと、じゃあ・・単刀直入に言うけど、私はまた皆と仲良くなりたい。笑い合いたい。だから、まず、今皆が何をしているか言い合おう!」
「おーけー。じゃあ、私からね。私は楊千高校のエース」未希に続き、碧が言う。
「わ、私は・・有翅高校の・・セッター」
「私は、菱川高校・男子バレーボール部のマネージャー」
「成南高校の副主将。」
私は、改めて皆の凄さを知った。
「ほへー・・やっぱり皆すごいね!」
「何言ってんのよ。冬香もあのままバレーボールをやっていたら、一年でエースにはなっていたよ。」
信じられなかったが、未希が真剣な表情で言うから、そうなんだろう。
「それは、嬉しいね。」
「冬香…」
「ん?」
碧が、恐る恐るといった様子で話しかけてきた。
「冬香はもう、…その…バレーボール……できないの?」
「うん…体育の授業もちょくちょく休ませてもらってる」
「そっか…そうだよね……ごめんね、ごめんね、ごめんなさい……」
碧はうつむき、涙声でごめんと繰り返していた。
「え、え、何で?え、どうしたの?」
突然のことに、どうすればいいのか分からなくなっている間も、真澄は黙ったままだった。すると、一人の男子高校生がやって来た。
「碧!大丈夫か?」
「遊馬!?……待っててって…いってたのに…」
「ごめん。泣いてる碧を見てられなくて」
「ええと、あの、あなたは?」
困惑に困惑が重なって、訳が分からなくなってきた。流石に、未希も困惑していた。
「あ、すいません。俺は、碧の彼氏の宮(ミヤ)遊馬(ユウマ)です!よろしくです!」