真澄の件が落ち着き始めた頃、私たちは全国中学校体育大会に差し掛かっていた。そして、この頃になると私は練習試合で活躍するようになり、異名がついた。
‘桜並の疾風’
まさか、自分に異名がつく日が来るなんてと思うと、ただただ嬉しかった。でも、やっぱり真澄のことが気がかりだった。
 
 今年の全国中学校体育大会の予選は、真澄も試合に出ることになり心配をしていた。たが、杞憂だったようで無事に全国大会への出場を果たした。そして、全国大会を数日後に控えた日。皆は、体育館に残っていた。
「よし、次は全国大会だ。皆、晴れやかな気持ちで帰ってこよう❗」
「おぉ❗」キャプテンのこの言葉に、皆が闘志を燃やした。

 そして、とうとう全国大会が始まった。全国大会となると、規模が大きく人もいっぱいだ。 
「う~…緊張するなぁ…」
「緊張が一瞬で吹き飛ぶ薬とかないかな…」
「それな!」と、現実逃避に等しい会話をしていると、キャプテンが皆に声をかけた。
「じゃぁ、ウォーミングアップをするよ~」
「「はい!」」
これからは、全国大会だ。こんなところで、弱音をはいてどうする⁉
皆もそう思ったのか、顔つきが変わった。

 そして桜並中学は無事に全国ベスト16に食い込み、惜しくもベスト8は逃した。もちろん、悔しかったが私は皆とやり抜いたんだという満足感が勝りそれほど敗北感はなかった。
 全国大会が終わり、学校に着くともう皆は満身創痍だった。
「じゃぁ、体育館でミーティングをするよぉ」
「はぁい」キャプテンも声の抑揚がない。

 ミーティングが終わり、真澄たちと帰路についていると私のお母さんが校門まで迎えに来ていた。
「あ、お母さん、どうしたの?」
「迎えにきたのよ。もう、満身創痍状態になってるかもって思ったから。」
「うっ…ご明察。ありがとう!」
「どういたしまして~」そこまで話すと、私は皆にお母さんを紹介した。
「はじめまして。早瀬真澄です。」
「及川未稀です。」
「……西宮碧です…。」
「はじめまして。いつも、冬香がお世話になっています。じゃぁ、皆で帰ろっか。」
「うん。」途中までは母を含む皆と帰り、数分たったところで真澄たちと別れた。
「じゃぁ、また明日!」
「うん。またね~」真澄たちと別れたあと、母が話しかけてきた。
「真澄ちゃん、元気そうで良かったね。」
「うん。…そうだといいな。」