「宗谷くんっ、あの──」


“ごめんなさい”

言おうとした声を、むすっとした顔の宗谷くんが遮った。


「誰、あいつ」

「……え? あの人は、3年の乾先輩よ。私の中学の先輩なの」

「それで?」


そ、それで?


「えっと、私、中学の時生徒会長やってたんだけどね。その前任が、乾先輩で……」


待って。

何これ。

私はいったい、何の説明をしてるの?


「むかつく」


む、むかつく!?

小さく聞こえてきた突拍子のない声に、ポカンとしてしまう。


鋭い目つき。

眉間に寄った皺。

見るからに不機嫌な、彼。

情報処理が追いつかない。

その場で固まっていると、宗谷くんはスタスタとどこかへ歩み始めた。


途端、理解する。


やっぱり、怒ったのかな。

うん、きっとそうだよ。


宗谷くん、意外と繊細なのかもしれないし。

私から呼び出したのに、先輩と話し込んで置き去りにするなんて。

ひどいことしちゃったもん、私。


ちゃんと、謝らなきゃ。

……ん、謝る?


──はっ。


その時私は、とってもとっても大事な事実を思い出した。


まだ断ってないぃーーーーっ!