「そうだ。テスト勉強は捗ってる?」
「え?」
「ん?」
「......はい、それなりに……」
言葉が尻すぼみになってしまった。
塾にも通ってるし、勉強はしてることにはしてるけど。
ここ最近、その時間は明らかに減っているから。
「それなり、か。でもあんまり根詰めるとよくないし、それもいいんじゃない?」
「先輩……」
「もしわかんないとこあったら、いつでもきいて? 俺でよければ、だけど」
「え、そんなっ、いいんですか?」
「もちろんだよ。涼岡のためならいくらでも時間作るし」
......私のためならって。
優しいなぁ、先輩は。
じんわりと心が暖かくなっていく。
「とにかく、無理しない程度にお互い頑張ろう」
「はい」
真っ直ぐと頷いた私に、彼はキュッと口角を上げた。
「じゃあ俺、そろそろ行くよ」
「では、また」
私はヒラヒラと手を振り、微笑み返す。
なんだか懐かしい気分。
こんなに先輩とお話したの、久しぶりだなあ。
なんとも言えない懐かしさが、そっと心を包みこむ。
またお話しできたらいいな。
なんて、その後ろ姿を見送りながら、手を下ろした時だった。
「ふーん」
ポツリ、静かに落された声。
振り返った直後、私は青ざめる。
宗谷くんのこと、忘れてた!