どれくらい時間が経っただろう。


「ついたぜ」


その声を合図に、足が止まった。

瞬間。


「……!?」


呼応するように、私の中でピタリと時が止まった。


何も聞こえない。

何も考えられない。


そんな時間の中、私は一点に目の前の建物を見つめる。


ただ、これだけはすぐに理解できた。


見覚えのある真っ白な屋根と壁。

大きなガラス張りの窓。

そこから覗く、鮮やかなショーケース。

そして、

正面の、大きな“Patisserie plage”の看板。


目に映るそこは、間違いなく──。


「なんで……」


私の、大好きなケーキ屋さんだということを。