しっとりサクサクのタルト生地。
その上になめらかなカスタードムースを乗せて、ふわふわのスポンジ生地と、生クリームをさらに重ねる。
一番上には、ジャムで艶を出した、宝石みたいに輝く真っ赤な苺を。
……こんなかんじ?
一旦手を止め、全体を見てみる。
うん、結構いいかも。
頭に思い描いた通りとまではいかないけれど、これなら十分満足だ。
そっと頷いて、口元を綻ばせた。
放課後の多目的室。
誰もいないその空間で一人、机に向かう。
──これが私、涼岡芽衣の至福の時間だった。
多目的室っていっても、言わば空き教室のようなもので。
いくつかの机や椅子以外何も置かれていない、閑散とした部屋だ。
私が座るのは、いつも窓の側って決まっている。
端っこのほうが落ち着くんだもの。
それに、外の景色だって見られるから。
この空間には、この時間、今まで私以外誰も入ってきたことがない。
だからこそ、私はこの場所が好き。