「小川の言ってたこと、わかるかも」

「え、希美?」

「いや、なんでもねぇよ」


なにそれ。

なんでもなくないでしょ。

むぅ、と口を結ぶ。


すると、ポンッ。

宗谷くんの手が頭に乗った。



「芽衣。勉強ばっかもいいけど、たまには息抜きぐらいしろよな」

「宗谷くんこそ、少しくらいテスト勉強しなきゃだめよ?」


じっと見つめられて、じっと見つめ返す。


そして、生まれる沈黙。


……なにこれ、にらめっこみたい。


何だか急におかしくなって。


「「ふふっ(くくっ)」」


吐き出すように笑ってしまった。



「じゃあ、また月曜日な」

「うん」


最寄り駅まで一緒に帰った私たち。

改札を通り抜け、さよならと手を振る。


……よし、頑張ろう。

宗谷くんを見送った私は、晴れやかな気分でぐっと腕を真上に伸ばした。


「あ……」


ふと見上げた空に、意識を奪われてしまった。

不思議。

あんなに覆われてたのに。


……綺麗。


気づけば、隠れていたはずの太陽が、キラキラと元気な姿を見せていた。