お姉さんはアメリカ中を駆け回り、圭吾の手術を引き受けてくれる脳外科医を見つけてくれた。

彼の医療チームは、圭吾のように腫瘍の摘出が困難だと言われた患者に対し、研究段階の医療器具を用いてオペをする臨床試験を行っていて、希望すれば、桜大付属病院に来て手術をしてくれるとのことだった。

ただし、成功率は今の段階では50%。
二人に一人が命を落としてしまうという危険なオペだ。

手術が可能であるタイムリミットはあと一週間だそうで、明日までに返事を聞かせて欲しいとのことだった。

お姉さんが帰った後、圭吾と二人で話し合った。

やはり50%という数字が重くのしかかる。
だって、一週間後に生きていられる確率が二分の一なのだから。

けれど手術をしなければ余命半年。
もちろん、手術は受けるべきなのだろう。

圭吾も50%の望みにかけてみたいと言った。
“佐奈との未来を手に入れたいんだ”と。
 
私も圭吾の言葉に頷いて、覚悟を決めたのだった。



………


そして、一週間後。
いよいよ手術の日を迎えた。

アメリカから来た医療チームがオペ室へと入って行く。

きっと私は不安げな顔をしていたのだろう。
圭吾は私の頰に手を伸ばし、優しくふっと微笑んだ。

「佐奈…大丈夫だから。必ず佐奈のもとに戻ってくるよ…だから、いい子にして待ってて」

それが、圭吾の最後の言葉だった。