それでもあなたを愛してる


佐奈を迎えに行く時間になり、車で大学へと向かった。
いつもの待ち合わせ場所に車を止め、佐奈を待っていたのだが。

珍しく、佐奈が誰かと並んで裏門から出てきた。

『こんにちは。塩田万里です。今日、佐奈ちゃんとお友達になったばかりなんですけど、どうぞ宜しくお願いします』

え、友達!?

佐奈の隣でにこにこと笑う彼女を、思わず凝視してしまった。

『あ、どうもこんにちは。真崎と言います。良かったら駅まで乗って行きませんか?』

とりあえず、俺は彼女を送ると言って車に乗せた。

明るくて、とてもいい子そうだった。
彼女なら、きっと佐奈を大事に思ってくれるだろう。

後部座席に座る彼女を観察しながら、ホッと胸を撫で下ろす。

佐奈も楽しそうに笑っていた。

『佐奈を宜しくお願いします。世間知らずで誤解されやすい子ですが、どうか仲良くしてやって下さい』

駅に送り届け、俺は彼女に佐奈のことをお願いした。まるで保護者みたいだと変に思われたかもしれないけれど、とにかく必死だったのだ。

その後、社長にもこのことを報告すると、ホッとした笑みを浮かべながら喜んでいた。


けれど、病院からの帰り道、佐奈の機嫌が一変する。
ムスッとしながら、ずっと窓の外へ顔を向けていた。

『佐奈。俺に何か怒ってる?』

さすがに気になって訊いてみると、

『私は、いつだって圭吾には怒ってますけど』

ジロリと睨みつけられた。

『まあ、そうだよな』

返す言葉が見つからなかった。

と、その時、俺のスマホにラインが入った。

『圭吾。ラインだよ』

『ん。後で見るよ』

『でも、相手の人も待ってるかもしれないよ。車を止めて出てあげた方がいいんじゃない?』

律義で真面目な佐奈は、怒っていても俺のラインが気になるようだ。

『ラインだから大丈夫だよ。緊急だったら電話にかけてくるだろうし』

佐奈はいつもここで、俺の説明に首を傾げる。
まあ、佐奈はメールさえよく分かっていないから、無理もないのだが。

ようやく赤信号になり、俺はスマホを開いた。

光輝からだった。

『明後日ならうちの親も空いてるみたいだ。それを逃すと結構先になる』

お見合いの日取りの件だ。
佐奈に伝えると、日程は大丈夫と言いつつ、浮かない顔を見せた。

『佐奈。とりあえず会うだけでも会ってみよう。どうしても嫌だったら後から断ったっていいんだから』

とにかく光輝にさえ会えば何とかなるだろう  
そう思い必死に説得した。

『そうだね。分かったよ』

佐奈は観念したように頷いた。