「ところで、圭吾の話って何?」
ダイニングテーブルで圭吾と向き合いながら、私は圭吾が作ってくれたフレンチトーストをかじっていた。
「うん。実は…新しい家政婦のことなんだけど。住み込みとなると色々と条件や審査が難しくて、手配がちょっと遅れてる」
「別にいいよ。私なら一人で大丈夫だから」
朝食まで作らせておいて、言えたセリフじゃないけれど。
圭吾を前にすると、つい強かってしまうのだ。
「とにかく、私のことは、もうほっておいてもらって構わないから」
「いや。しばらくは俺が佐奈の面倒を見ることに決まったから」
「は?」
思わずフレンチトーストを落としそうになった。
「それ、どういうこと?」
「社長から頼まれたんだよ。防犯上のこともあるし、何より佐奈の体が心配なんだそうだ。だから、新しい家政婦が決まるまでは、俺がこの家に住んで佐奈の面倒をみるから」
「そんなの断れば良かったじゃない。圭吾には大事な恋人がいるんだし、彼女だって嫌な顔するんじゃないの?他の女性とひとつ屋根の下なんて、普通許さないと思うけど」
別に彼女の気持ちなんてどうでも良かったのだけど。
嫌みを込めて言ってみた。
けれど、圭吾はアッサリと否定する。
「彼女なら大丈夫だよ。俺の仕事に理解あるから」
仕事……。
そうだった。
私のことは、二人にとっては仕事同然。
自分達の独立資金だってかかってるんだもんね。
「あっそ。じゃあ、勝手にすれば」
私はプイッと顔を背けた。
女としてさえ認識されていないことに虚しさを感じる。
その一方で、
圭吾がそばにいてくれるという状況を、嬉しいと感じてしまう自分もいて。
結局、私は、
圭吾を憎むことも、諦めることもできそうにない。
できるのは、ただ愛することだけだった。