「こんな場所に一人で来て…一体どういうつもりだよ! どれだけ心配したと思ってるんだ!」
圭吾は厳しい口調で私を叱りつける。
「知らない! 圭吾には関係ないでしょ! 私に偉そうに説教なんてしないで!」
私は圭吾の顔をキッと睨みつけた。
すると、圭吾は深くため息をつきながら、私の腕を掴んだ。
「とにかく帰るぞ」
「イヤッ!」
私は圭吾の手を大きく振り払う。
「何よ、父と二人で二年間も私を騙してたくせに! 今度は何を頼まれたの? 私を連れ戻して見合いさせろとでも言われた? 圭吾も父も勝手なことばかり! もうウンザリよ!」
「佐奈…」
わめき散らす私を見て、圭吾は黙り込んでしまった。
深く傷ついたような顔をして。
だけど…。
私はその何倍も傷ついているのだ。
そんな顔したって知らないんだから!
「もう、帰って! 圭吾の顔も父の顔も…二度と見たくない」
大声でそう言うと、圭吾は私の肩に両手をかけて、真剣な表情で私を見つめた。
「佐奈…俺のことは一生恨めばいいから。一生許さなくていいよ。でも、社長のことだけは」
と、そこで、圭吾のスマホが鳴り出した。
すると、圭吾は「ごめん」と呟き、そのまま電話に出てしまった。
きっと、七菜さんなのだろう。
こんな時まで彼女を優先させるのかと冷めた気持ちになる。
もう知らない!
私は圭吾に背を向け歩き出した。
と、その時だった。
「佐奈! 社長が倒れたらしい」
背後からそんな言葉が飛び込んできた。
「え!?」
「自宅で心臓発作を起こして、病院に運ばれたそうだ」
うそ…。
頭が真っ白になった。
どうしよう。
私のせいだ…。
ガクガクと体が震え出す。
「佐奈。とにかく病院に行くぞ」
圭吾はそう言って、私の手をギュッと握りしめた。



