「あ。」

「…逮捕しても、良いでs」

「やだ。」

「ですよね。」

「なら聞くなよ。」


今日は邪魔なライバルを減らすために活動中。

悠長に話してる暇なんか無い。



「千桜さん、どうか引き下がってはくれませんか。
お願いします。」

「なーんて言われてもな、っ!」


ライバルマフィアがこちらに向かって来ているのが見えた。

僕、視力良いからさ。


じゃなくって!!

「おい涼!!こっち来い!!」

「ちょっ、」



そこらへんのガラクタの山に隠れて、

とにかくコイツをどうすればいいか考えた。


でも僕のちっぽけな頭じゃ考えつけない。








「そこを動くな。
 

 警察だ。」

「りょう、おまっ」


ライバルマフィアは銃口を涼に向けた。

「…不本意だが、今回は見逃してやる。

 次は捕まえるからな。」


夜の12時あたりで、暗くて顔も見れない状況だったから、相手も殺す理由が無かったんだろうね。

すぐに帰ってくれた。


でもなんで見逃したんだろ。

「…千桜さん、大丈夫ですか?」

「え、あ、うん。

 え、なんで逃がしたん?
 捕まえろよ。」

「貴方それ僕に言える立場ですか。

 まぁ理由は単純に、
 貴方を守らなきゃって思って。」

「馬鹿なん?」

「感謝する気持ちはないんですね。」

「だって…だってさ、
 男のプライドってさ、ないわけ?

 刑事として、とか、

 逃がしちゃっても、良かったの…?」







「いいわけないでしょう。

 警官の概念に背く行為です。」

「じゃあなんで。」

「だって、


 貴方を守らなきゃですから。

 警官である以前に僕は男です。

 女性を守るのはあたりまえでしょう。」



「おまえほんっと馬鹿だね。

 でも良い奴だね。



 僕の好きなタイプ。」

「…告白ですか?」

「ちげーよ。
 単純に好きーってこと。

 じゃあ僕は帰るね。

 
 また会いに行くよ。じゃね。」

「あ、はい。」


好きなのは嘘じゃない。

決して恋愛感情ではない。

単純に好き。うん。


あいつと付き合えるか…?


いや無理。ふっつーに無理。

…うん、単純に好きだわ。

「千桜、終わったのか。」

「はい、終わりました。




 義父さん。」

僕を育ててくれた、大切な人。

それが、義父さん。


身長でっかくてビビるけど、
優しくて心があったかい人なんだ。

怒るとクソ怖いけど。

義父さんの低い声が僕へと伝わる。

「早いな。」

「…スピード勝負?」

「少しズレてるぞ。



 …帰ろうか。」


「うん、帰ろう。」


…義父さんの話は、また今度でいいかな。

今日は義父さんのために作り置きしてた
ビーフィジチュー温めなきゃだからさ。