僕だって、この状況が好ましいとは思っていなかった。

誰か、ここから連れ出してよ…

そう何度何度思ったって、誰かはいなくって
結局大事な選択は自分がしなくちゃいけなくて

幼い頃をふと、思い出した。
昔はあんなに…と窓の向こうを見つめると
あまりにも、光が綺麗にさしてきたから
眩しくて目を細めた。曇った中から顔を覗かせた光。授業中、という枷さえ無ければ最高にロマンチックなのだろう。

そんなことを、ぼーっと考えていたらいつの間にか授業は終わっていた。

次が美術の移動教室だったため、急いで絵の具セットや筆箱などの一式を持ち教室に背を向けようとしたところでザーっという
音が足を止めた。

雨が、昔はとっても憂鬱で嫌いだった。
……でも、あの日から好きになれた。

あぁ、君と寄り添う理由を見つけた

あの日も雨が降っていた。

きっと君は飛躍して高く高く登ってるのだろう。
それに比べて底で縮こまってて、きっと僕は重荷。ただの荷物。

だから伝えなかった。

本当は、言いたかった。

けれど、僕には勇気も意思も持ち合わせがなかったのだ。
「ねぇ……もし君がまた僕と寄り添ってくれるのなら」

あの日のように傘を差し出すから
だめな僕に一つだけ芽生えた“自分の意思”で
君に降り注ぐたくさんのものを僕が救うから

「……会いたい……」

そう、呟いた言葉は雨に紛れて何処かへ消えてしまった。