敷地内に入るのは初めてだった。使用人に先導されて大きな鉄の門をくぐると、よく手入れされた庭が目の前に広がる。



ほんとにここは日本なの?しかも同じ市内にある住宅だなんて信じられない。



名前の知らない色とりどりの花々が、私のことをお出迎えしてくれるみたい。もう完全にメルヘンの世界。



華やかだけど、うるさくならないような色づかいで、普段は花にそこまで興味のない私でも、足を止めてじっくりと観察したくなる。




「すごい……きれいなお庭ですね」




「ええ。もちろん庭師も入れておりますが、奥様が趣味でガーデニングをされてます。


二階のテラスはカフェスペースとなっておりまして、ご家族の皆様がお茶を楽しんだり、読書をいたします。


お坊っちゃま達があそこで勉強をされることもございますよ」