「……海様、まだそこにいるんですか?」




涙が少し落ち着いた頃、私は扉に背中をつけたまま、向こう側に問いかける。




「うん、ごめん。一人になりたいときだってあるのにな」



海様の声は、床に座る私の真後ろから聞こえてきた。扉の向こう側で彼もまた腰を下ろしているのだろう。




「泣いてるとこ、見ちゃったからだよな。どうしても放っておけなかった。心配で……」




この向こう側に海様がいる。背中がじんわりとあったかくなっていくのを感じていた。



少し安心したせいだろうか。私の口からは自然と言葉が出てきた。