「なんか、あったの?」



夕食後、自分の部屋に向かう途中の廊下で、後ろから急に声をかけられた。



その声に胸が反射的にどきっとしてしまう。耳に心地よく響く、少し低くて甘い声。


だけど今の胸のざわめきは、悪いことがばれたときのそれに近い感じ。



今は誰かと話す気分じゃなかった。夕食中はなんとか平静を装っていたけど、それもそろそろ限界に近い。



部屋で一人で考え事をしたかった。特に彼とは顔を合わせるのも気まずくなりそう。



それでも声をかけられた以上、無視するわけにもいかない。振り向くと、海様がこっちに向かって歩いてくるところだった。