「声、震えてない?」



お願いだから、それ以上言わないで。気づいていても知らんぷりしていてほしい。




「そ、そりゃあショックですよ。幼なじみなのに、彼女がいるなんて一言もいってくれないし……」


「うん、わかった。もう帰ろ」




風様は、私の持っていた空のプラスチック容器を取り上げて、ゴミ箱へと捨てた。


そして、私の顔を見ないようにしてくれているのか、一歩前をずんずんと歩き出す。私は必死になって彼の背中についていく。



入口の自動ドアで立ち止まると、風様は前を向いたまま、「お前、理想高すぎなんだよ」と、ぼそっと言った。



その背中を見つめながら、私は誰にも気づかれないように、こっそりと涙をこぼした。



私ははじめて、自分のことしか考えていないことに気づく。ただ漠然と、バチが当たったんだと思った。