「風様、困ります……」



ゆっくりと首を横に振る。これでも精いっぱいの抵抗だ。身体からは力が抜けてしまって、どうすることもできない。




「……困れよ。困ればいいじゃん。それで、もっと俺のこと考えて切なくなればいいんだ。


まじ、意味わかんない。あーだめだ、好きだって思った瞬間には、もうとっくに振られてんだよ」




風様がゆっくりと身体を離す。




「……悪かった。俺、嫌われてもおかしくないようなことしてるよな」


「いえ……」



思いのほか、ドキドキしている。まるで熱がぶり返したみたいに身体は熱くなっている。



風様には少し子供っぽい印象を持っていたけど、全然そんなことはなかった。



太い腕に、低い声。背中に感じていたその身体は、私よりも一回り大きい。