一瞬とはいえ、本当に嬉しかったんだよね。


風様の気持ちにもう少し浸っていたいとも思ったし、錯覚って言われたときは寂しかった。



だけどそれが自分勝手なことくらい、恋愛経験が少なくてもわかるから。



それでも今は、純粋に『ありがとう』を伝えたい。



「……なんだよ、その運動部のノリ。頭上げろよ。

お前、そんなでかい声出して、誰かに聞かれたら許さねーからな」



あっ、忘れてた……家の中があまりにも広いもんだから、人の気配を気にしていなかった。



「……この家、防音対策してないですか?」


「さあ?音楽室じゃねーんだから。一階の信子さんの部屋には聞こえているかもな」


「うそ、ごめんなさい……」