『……ごめん、言わなきゃよかったな』



――あの告白のあとで私が返事をする前に、風様がこう言った。



気まずくなるのを避けるためか、帰り道も他愛のない雑談を繰り返し、家の中でも普通どおりに振る舞っていた。



思わず、さっき告白を受けたことは夢だったのではと疑うほど。



実際、軽い気持ちで言ったのかもね。今日好きになったような感じだし。だから私もあまり気にしない方がいいのかもしれないけど。




それでも、肩にはまだ風様のブレザーの温度が残っている。だいぶ時間は経っているのに。



屋根を叩く雨の音も、びしょ濡れの自転車も……



全ての景色が今でもはっきりと思い出せるんだ。なんだか悲しい色をしていたその景色が、今の気持ちとリンクしているみたい。