「ふざけんなよ、こっちが下手にでてりゃ調子に乗りやがって」

「きゃっ」



男が激高し私の腕を掴んで引き戻した。
私はキッと男を睨みつける。



「誰がてめぇみたいな可愛げのないガキを相手にするかよ」

「なによ!じゃあさっさとどっかいってよ!」

「ちょ…、紗千…」



菜穂がビクビクしながら私の腕を引く。



「このクソガキ…!!」



男は声を荒げ、私の腕を掴んでいないほうの手を振り上げる。
私はビクッと肩を震わせ、衝撃に備え目を閉じた。


しかし、一向にその衝撃はやってこない。
その代わりに、男の小さな唸り声が耳に届いた。




「俺の連れに、何か用か?」




そして続けて聞こえてきたのは、聞き慣れた冷静な声。
私はそっと目をあける。




「かし…、竜…」



目の前に見えたのは、鋭い眼光で男を睨みつけ、男の腕をひねり上げている竜だった。