「…ありがとう」
「いや。なにか必要なものがあったら言ってくれ。できる限り用意する」
「うん。大丈夫」
ぎこちない会話。
前から別に話しやすい雰囲気なんてなかったけれど。
空気が重い。
「ねぇ。もうやめようよ」
「は?」
「その辛気臭い感じ。私はもう大丈夫だから」
ずっと側にいるのに、この空気がずっと続くなんてその方が嫌だ。
「私はもう気にしていないし、治る怪我なんだからもういいの。鹿島さんも気にしないでほしい」
「気にするなと言われても、無理だ。俺は、プロとして失格だった」
どうしたら伝わるんだろう。
この怪我が治ってしまえば思い出すことも減るかしら。
「…今度は、ちゃんと守って」
「もちろんだ。必ず守ると誓う」
「だったらいい。それなら、本当にもういいから」