「あれ…お父さん……?どうしたの?」
「どうしたって、お前…。覚えてないか?怪我したんだぞ」
父親の姿に驚いたのか目覚めて一言目はそんな言葉だった。
「ごめんな、紗千…。俺のせいでこんな目に……」
「何言ってんの…。私がドジだっただけだよ」
なんでこんな時に笑っていられるのだろうと思う。
父親に向けた笑顔になぜだかとても惹きつけられて目が離せなくなった。
「それより…ちゃんと食べてる?せっかく借金なくなったのに…。好きなもの好きなだけ食べないと」
「バカだな…。紗千がいないと何食べても美味くないよ」
温かな親子の会話。
俺たちはそっと病室を後にした。


