俺の中の小野田紗千とは。
父親の借金のために命の危険のある身代わりなんかを引き受けた馬鹿な女。
そしてその父親は、しょうもない借金を作ったあげく娘を犠牲にするだらしない父親。
借金の詳細なんて知らないし、借金を肩代わりしたという話しか知らないが、それ以上のことを知りたくもなかった。
どうせしょうもない理由なのだと。
それなのに、この父親は。
娘を心底心配そうに。
心から愛しいものを見るように。
俺は、何かを勘違いしていたのだろうか。
「紗千!?紗千!わかるか!?」
父親が一層声をあげ呼びかける。
見ると、薄っすらと小野田紗千の瞳が開いていた。
まだぼんやりとしているのかゆっくり数回瞬きをしている。
「紗千…っ!」
「紗千さん!よかった…!」
喜びの声が上がる。
小野田紗千は状況が理解出来ていないのかぼんやりと周りを見た。


