「終わりましたのでこちらへ。先生から話がありますので」
看護師に呼ばれ、俺たちは病室に入った。
そこには包帯を頭や腕に巻かれた姿の小野田紗千がベッドに横になっている。
その脇に医師が立っていた。
「紗千っ!」
父親が勢いよく駆け寄った。
「先生、あの、どうなんでしょうか」
「頭の方は強く打ち付けたようですが、脳の方への影響はないでしょう。意識が戻れば大丈夫です。擦り傷、打ち身はありますが、運良く骨折はしていませんでしたし」
「そうですか」
久住さんが少しホッとしたように息をついた。
医師たちが病室を出ていく。
残された俺たち。
父親は小野田紗千の手を握り、寄り添っている。
小野田紗千が大切にされていることがわかる。
想像していたものとだいぶ違うその姿に俺は戸惑ってしまう。


