「入るぞ。……、幸子お嬢様」



その時いつものように大したノックもなく入ってきた鹿島さんが幸子お嬢様の姿を見て驚きの声をあげた。



「あら、竜。あなたノックもなしに女の子の部屋に入ってくるの?」

「……いや、…悪い」

「ほんと、デリカシーがないんだから」



幸子お嬢様は呆れたように苦笑しながら鹿島さんを見る。
鹿島さんは困ったように頭をかきながらそれに答えた。



「それより、出てきて大丈夫なのか?」

「ええ。変装はキチンとしてきたし、ボディガードも付いてきてくれているし」

「そうか。でも、用心に越したことはないからな」

「ほんと、竜は過保護なんだから。私のせいで怖い思いをした人がいるのに顔も合わせないなんて非情なことできるわけないでしょう?」




なんだろう。
この2人の空気。

とても仲がいいというか、信頼し合っているというか。

そもそも、鹿島さんの態度がまるっきり違うの。
私にはそんな風に心配そうにすることなんてない。
いつだって口が悪くて嫌なことばかり言ってくるくせに。


幸子お嬢様も、鹿島さんのこと竜って呼び捨てにした。