それからしばらく屋敷でおとなしくしていた。
私が屋敷でおとなしくしているからか、鹿島さんやボディーガードの人は側についていない。
だから、ここの所鹿島さんの姿もあまり見ていないのだ。


会えば悪態ばかりだし、こちらとしても好都合なのだけど。




「紗千さま、お時間よろしいでしょうか」

「…はい」




ぼんやりしているとノックの音が聞こえ、その後に伊永さんの声が聞こえる。
伊永さんもこれまた久しぶりだ。

私の返事を聞いて部屋の戸を開け、伊永さんが入ってきた。



「ゆっくり休めていますか?」

「あ、はい。それはもう……」



暇なくらいだ。
最初の頃みたいな恐怖感も不安感ももうないし。




「紗千さんにお会いしていただきたい方をお連れしたのです」

「会う…?誰ですか?」

「幸子お嬢様です」

「え…?」




幸子お嬢様って…。
これまで、写真や名前しか見たことも聞いたこともない人。
私が身代わりになっている人。


どこにいるかわからなかったけど、会いに来ているの?