「浩太は…、ま、してないよね」
「は?なんの話」
「中間テスト、もうすぐでしょう?」
怪訝そうな浩太に、菜穂がそう付け足す。
浩太は、ああ、と唸りながら納得したように頷いた。
「バカだな、やってるに決まってんだろ」
「え!?ウソ、お馬鹿で有名な浩太が?」
「おい!別にバカで有名じゃねぇし!」
心底驚いた表情をして浩太を見ると、浩太は怒って反論してくる。
そんな事を言いあいながら教室の戸をくぐった。
「へぇ、でもやってるんだ。じゃあ、楽しみね。浩太の渾身の結果が」
「ちょ、プレッシャーやめろよ」
青ざめた顔で浩太が言う。
「別に、大企業に行きたいわけじゃねぇし。程々に出来りゃいんだよ」
「その程々に、到達してんだか…」
「おい!」
浩太はいい意味でも悪い意味でも楽観的だ。
向上心はあまりない。
現状で満足するタイプ。
そして、私もどちらかというとそのタイプ。


