だって。
だって、本物の幸子お嬢様は無事なんだ。
私なんかのために、お金を無駄にするわけがない。
だって、そのお金のために争っているのだから。
そうだ。
護ってもらえるなんてそんなのでまかせだったのかもしれない。
そう言えば安心するから。
きっと私は、使い捨てられるんだ。
こんな事なら、お父さんの言う事をきいていればよかった。
言っても無駄だって、最初からあきらめなければよかった。
「よぉし。これで準備は整ったな。電話かけて作戦開始だ」
男は誇らしげに声をあげ、上機嫌にスマホを掲げた。
しかしその時、部屋の外の方が騒がしくなる。
騒がしい声と、何かがぶつかる音。
「なんだ…?おい、ちょっと見て来いよ」
「はあ?俺がかよ…。ちょっと待てよ」
掲げたスマホを一度終い、外の様子を見に男が近づいていく。
そっと扉に手をかけ、伺うようにそっと開いたその時。
勢いよく外側から戸をひかれ、男は扉に引っ張られるようにして前かがみになった。


