「今日は疲れただろう。ゆっくり休め」

「うん」



あの毒味の時からぎこちなくなってるのは、きっと私だけ。
鹿島さんは変わらず淡々と接してる。

鹿島さんの仕事。
私の理解できない考え方。



「鹿島さん。…今日みたいな時はちゃんと言葉で止めてほしい」

「なんの話だ」

「私が無知なせいで鹿島さんにもしものことがあったらって考えると、怖くてしかたない」

「俺がどうなろうと、お前には関係ない。俺は仕事で、あんたとも仕事上の関係だろ」

「きっとそう言われるって思った。鹿島さんには私の気持ちなんてわからない」




なにが起きたわけでもない。
結局、毒は入っていなかったのだから。
それでも、もしもを考えたら震えるほど怖かった。

あの場の雰囲気が、きっとそれを増長させていて。
私はきっと今まで、愛されて恵まれて生きてきたんだって。


私の知らない世界なんだって痛感したから。



「…おやすみなさい」


鹿島さんも結局、そちら側の人間で。
私の知らない世界を生きている人。
きっと、わかってなんてもらえない。