「俺を救ってくれた言葉をくれたのは、幸子お嬢様じゃなくて、お前だったんだな」
「え…?」
「俺に前を向くきっかけをくれた」
「私…?」
え、幸子お嬢様じゃなかったの?
葬儀の時に出会った子どもって…。
私の事だったの?
私はてっきり、私にも会ってたけど、幸子お嬢様にも会っていて、そのお嬢様に言われた言葉に…ってことだったんだって思ってたのに。
子どもだった私の言葉に竜が…?
「だからといって、幸子お嬢様への感謝の気持ちは消えないし、今更何かが変わるわけじゃないけど。お礼だけは伝えておこうと思って。ありがとう」
「…い、いえ、その。私、全く覚えていないし…。ごめんね」
「いや、子どもの頃の事だからな。覚えていないのが当然だろ」
なんだか悔しいんだもん。
竜だけが覚えていて、私が全く覚えていないなんて。
昔に竜に出会ってたなんて。
そんな大事な事忘れてるのが悔しい。


