竜が連れてきてくれたのは海。
季節が早いってこともあってまだ人はいない。

車を降りて砂浜を歩く。
ザザーッと波の寄せては返す音が響いてる。



「私ね、夢が決まったの」

「夢?」

「うん。お父さんの借金があった時は、高校卒業したら働いて家計を助けようってずっと思ってたの。でも、いざ借金がなくなって、お父さんからも自分の道を歩けって言われて…」




話そうと思った。
菜穂にも言われていたし、私も話したいって思ったから。



「正直今更考えてた未来が真っ新になってどうしたらいいのかってずっと考えてたんだけど」

「見つかったのか」

「うん。竜のおかげで」

「俺?」



きょとんとした顔。
私は笑って頷いた。


「看護師になりたいの。竜が怪我した時、私なにもできなかったから」

「看護師か…。いいんじゃないか。誰かのためになる仕事だ。お前には合ってそうだな」

「そうかな…」