例え、それが勘違いだったとしても。
俺にとって幸子お嬢様の存在が特別であったことには変わりない。

幸子お嬢様の側で働いている時間はとても充実していて、本当に護りたいと大切にしたいと思っていたことは変えようのない事実なのだ。



「もう…、竜にとっての特別ではなくなってしまったのね」

「いえ。俺にとっては、やっぱり、幸子お嬢様は特別です。なにもわからない俺を成長させてくれたのは、幸子お嬢様ですから」

「そう。…なら、嬉しいわ」



幸子お嬢様はそう言って笑う。
ずっと特別だった。
それは今更もう変えられない気持ちだ。

今更、本当は違ったからと簡単に捨てられるものではない。
俺と幸子お嬢様が培ってきた時間は確かにあるのだから。



「竜、元気で」

「お嬢様も」

「また、会いに来てね」

「はい。もちろんです」




変わらないもの。
変わっていくもの。

俺の気持ち。
それだけが真実なのだと。