「浩一さんの事、知ってる?」
「ああ…。海外に行くと、連絡をくれた」
「そっか」
「お前の事、頼まれた」
「え…」
どこまでも、優しいんだ。
きっと、本当にもう浩一さんは私に会うつもりはないんだろう。
きっと私は、浩一さんを傷つけてしまったんだ。
「紗千?誰だったんだ?」
「あ…、お父さん…。あの、鹿島竜さん。KBGの…」
「ああ!そんな玄関先で…。入ってもらいなさい。それから紗千は着替えておいで。着替えたらお茶の用意を頼む」
「うん。竜、中にどうぞ」
「ありがとう。お邪魔します」
竜は畏まりながら頭を下げ、中に入った。
竜は敬語をしていた時のスーツ姿で見慣れた姿だ。
それなのに、久しぶりすぎて、どんな態度をとればいいのか困る。
会いたかったのに。
いざこうして会うと、どうしたらいいのかわからなくなるんだ。


