「ただいまー」
アパートに帰り、玄関を入ると元気よく声をかける。
今日お父さんは仕事が休みで家にいる。
「ああ、おかえり、紗千」
こうやってお父さんに迎えてもらえるようになってとても幸せ。
早くこの生活が戻って欲しいと思っていたから。
ここに竜がいてくれたらもっといいのに。
浩一さんとの約束。
私やっぱり守れないよ。
だって、竜に会いにいくのが怖い。
もうこれ以上傷つきたくない。
それに、私のせいで誰かが傷つくのをもう見たくない。
それならもう、深く関わらないほうがいいのかもしれない。
たまにふと、自分が疫病神みたいに思えるのだ。
あの恐怖は、簡単には拭えない。
「学校どうだった?」
「うん、楽しかったよ。あのね、将来の夢が見つかりそうなの」
「そうか。紗千の気持ちを優先するよ。またゆっくり話してくれな」
「もちろんだよ。でも、ろくに勉強してなかったし、頑張らなきゃ」
「お父さん、応援するからな」


