「あの地位や権力を物にしたい社長が、許すわけないのよ。自分の娘でさえ自分の立場のために利用するために政略結婚させるに違いないの。だから安心していたのに」
宇都木社長なら、ありうる話だと思った。
他人をコマのように扱って、お金でなんとでもなると思っている。
きっとそれは、自分の娘に対してもそうなんだろう。
それを幸子お嬢様がどう考えてるのかわからないし、私にはどうすることもできないことでもあるけれど。
だから、安心だったんだ。
竜がいくら幸子お嬢様に執着して、特別だと思っていても。
その想いが実ることはないと思っているから。
例え幸子お嬢様も同じ気持ちになったとしても、社長がそれを許さない。
きっと二人を引き裂いてくれるから。
「そんなの、恋じゃない…」
「子どものあんたになにがわかるの」
「大人の恋なんて知らないけど!でも、私たち子どもだって一生懸命恋くらいしてる!振り向いてほしくて努力したり!うまくいかなくて泣いたり!…他の人と一緒にいるとヤキモチ妬いて、こっちを見てほしくて…」


