「あの男が言ってたこと、気にしてんだろ」

「それは…。でも、その通りだって思うから。竜だって言ってたでしょ、最初。借金のために身代わりなんて引き受けてって」

「…悪い」



竜が謝るなんて変なの。



「私が出会ったのは偶然宇都木社長で。たまたま幸子お嬢様に似ていてっていう偶然が重なったからで。もし、出会ってたのが他の誰かだったとしたら、私があの犯人側だったかもしれないんだって思ったら…」

「そんなわけないだろ。そんなの、お前引き受けると思ってるのか?」

「わからないじゃん…。借金をどうにかしたいって思ってたら、あの人みたいに…」

「ないな」




はっきりと言いきられる。
なんでそう言い切れるのよ。



「お前が人を傷つける仕事を引き受けるわけない」

「でも…」

「いくらあいつがお前をずるいと罵ったとしても。人を傷つけることを決めたのも、そう落ちぶれたのもあいつ自身の責任でお前が気にすることじゃないし、自分を重ねる必要もない」

「…うん」