私はゆらりと立ち上がる。
ふらつきながら前に進んだ。
「おい!?」
「私は、逃げも隠れもしない。だから、他の人には手を出さないで」
「いいだろう。俺だって、必要以上に殺してぇわけじゃねぇ」
人から恨まれることも、憎まれることも無縁な世界に生きていたと思ってた。
私が狙われるのも、怖い思いをするのだって、ただ私が身代わりだったから。
宇都木幸子を名乗っていたからで。
私、小野田紗千とは関係ないって。
オートバイの男から狙われた時だって、結局それは犯人の顔を見てしまったからだって。
ちがった。
知らないところで恨みをかうことだってあるんだ。
「待て!この子を殺すなら、俺の後にしろ」
「はぁ?なんだてめぇ」
「竜!」
「俺は、お前を護るって言った。簡単に殺させてなんかやるか」
「でも…!」
私一人の命で、ここにいる人たちは助かるんだよ?
ここにはきっと重要な人たちが集まっていて。
庶民の私なんかよりも大切な人たちが。


