綺麗に着飾るのは何度目だろう。
こんな事をする前はこんなもの着る自分なんて想像つかなかった。



真っ赤なドレス。
自分に似合うとは思えないそれ。
それでも、普段はしないお化粧を施してもらえば鏡に映るのは普段とは違う自分。



今日は社長はいない。
宇都木のパーティだというのに変な話だ。
なんでも今日は、社長と対立しているそれこそ相続問題で揉めている弟主催のパーティらしい。
だから欠席だなんてあんたは子どもか、といいたい。


そして、揉めている相手が主催者ってことを黙っていたことに、竜はかなり怒っていた。



だって、言ってみれば幸子お嬢様を狙っている者たちの後ろにいる人…。



「気を引き締めておけよ。ここは敵地と思え」

「う、うん。飲み物にも食べ物にも手をつけない!それから…」

「幸子お嬢様を装う事も忘れるな」

「う…」



わかってるわよ。
ありったけの気品とお上品さを寄せ集めてるんだから。