トントン、とその時ノックの音が聞こえた。



「はい」


私の代わりに竜が答える。



「紗千さん、社長がお呼びです」

「社長…」



竜をチラリと見る。
私自身、あの社長は好きになれない。

自分勝手で傲慢で。
お金が全てだと思ってて。

でもきっと、竜の憤りと比べたら天と地、月とスッポン。



「なるべく早くということですが…」

「はい。すぐに行きます」



せっかちっていうのも付け足しておこう。



「じゃあ、竜。いってくるね」

「俺も行く。結局どうせ俺たちも聞くことになる話だろうから」

「…うん」



何を言われるだろう。
それはきっと危険がつきもので。
また怖い思いをすることになるかもしれない。


気は乗らない。
それでも、拒否権はないのだから。