「だからね、泣いていいよ。さっちゃんこうやって目閉じてる。かくれんぼしてるから!」

「は?泣かねぇって」

「大丈夫、見てないよ!」



そういう意味じゃねぇ。
なんなんだ、この強引さ。
これが子どもなのか。


そんな事を言われたところで、簡単に泣けるはずもなく。
それでも、なんだかそう言われたことで心がすっと軽くなったようにも感じた。

純粋無垢な子どもに裏表ない言葉で言われたからだろうか。




「いーい?」

「ああ、いいよ」

「おにいちゃん、頭貸して!」

「は?頭?」



言われるがまま頭を下げる。
すると、小さな手が伸びてきてわしゃわしゃと少し乱雑に撫でられた。



「な、なに」

「よしよし。いっぱいね泣いたあとね、おとさんにこうやってよしよししてもらうとね、嬉しくなって楽しくなってニコニコになれるの!」

「…そっか」



幸せな場所に、この子はいるんだ。