俺は、父親が嫌いだった。






「竜、ごめんな。お父さん、また仕事が忙しくなりそうなんだ」








「ごめんな。約束していたのに。また仕事で行かなくちゃいけなくなったんだ」






仕事、仕事、仕事。
自分の家族も護れずに、他人ばかりを護る父親。




「別に、いいよ。もう父さんと約束なんてしないから」




いつしか、諦めることを知った。
無理なのだと。

約束するから裏切られる。
期待するから落ち込むんだと。



もう、自分に父親なんていないものだと思えば。




きっと楽なのだと、悟った。